アイピー
自分がお仕事で、主に以下事項を担当しております。
なんじゃらホイ
電器製品に使われる半導体集積回路(LSI) の最も主要な部分は
で、ここで多様なデジタル処理を行っております。半導体集積回路中のデジタル論理回路は、人間で言うと脳の神経回路のようなもの(?)と言えるかと思います。
がしかし、人間は脳の神経回路だけで活動できるわけではありません。脳に外部からの情報を伝えるセンサ(例: 視覚、聴覚等の五感)や、記憶を保存しておく場所(例: 海馬)、活動のためのエネルギー供給(例: 心肺)、外部に結果を伝える出力(例: 筋肉)等、人間として脳の活動を支援する様々な "周辺機能" が必要となるわけであります。
半導体集積回路もそれに類似しておりまして、主要部分であるデジタル論理回路 (いわば脳神経回路) がその力を発揮するためには、それを支援する様々な周辺回路が必要となります。
周辺回路例:
- 外部と情報のやり取りをするアナログ-デジタル変換回路、高速入出力I/F回路
- 安定した電源を供給する回路
- 動作タイミングを決めるクロック信号生成回路
- データを保持するメモリ回路
ということで、半導体集積回路(LSI) の主要部分はデジタル論理回路であるものの、それ単体で機能することは出来ず、様々な周辺回路が必要となります。
がしかし!
こういった半導体集積回路の周辺回路は "周辺"回路であるものの、技術的に特殊で設計が難しかったり、開発(=仕様策定/アーキテクチャ選定/設計/検証/試作/評価等)に膨大な工数が必要となったりします。その結果、半導体集積回路を開発する会社は、周辺回路について
- 技術的難易度を考えると、自分たちでの開発が難しい
- 失敗リスクを考えると、自分たちでの開発が難しい
- 開発必要工数を考えると、自分たちでの開発が難しい
- 開発必要時間を考えると、自分たちでの開発が難しい
といった状況に面するわけです。
で、さらに悩ましいのは、こういった周辺回路が標準的な規格物 (例えばUSB3.0とか)のだったりする場合、
- 苦労して周辺回路を自社開発しても、それが製品の競争力に寄与しない
といったことになったりします。つまり苦労やリスクや人件費や時間が報われない開発。
では、どうすれば良いか?その解決策1つが
外部ベンダから、周辺回路をIPとして購入する (IP導入)
であります。
つまりは外部ベンダから周辺回路のIPを買ってきて、それを製品に組み込むということです。(主要部分であるデジタル論理回路は自社開発)
一言で言えば「金で解決」で、外部からIPを調達することで
- 技術的に難しい回路を自社開発する必要なし
- 外部のIP開発ベンダにより検証済でリスク低
- 他社ユーザの使用実績もあると更にリスク低
- 開発工数節約
- 開発時間節約
ということになります。
一方で、もちろん外部IP導入による懸念も存在しまして、一般的に非常に高価であることに加え、
- 自社開発でないので (技術詳細が分からず)、トラブル発生時の対処が難しくなる (⇒ トラブル対処時、IP開発ベンダの協力が必要)
- 自社開発しないと、社内に開発技術が蓄積しない (⇒ 何か事情が変わった場合に、自社開発に切り替えることが難しくなる)
といったことが比較的に大きな懸念になるかと思います。諸刃の剣。
とはいえ、背に腹は替えられない事情もあったりして、半導体集積回路を開発する会社は、周辺回路に関しまして
- 自社開発の技術的リスク
- 自社開発の失敗的リスク
- 自社開発の工数的リスク
- 自社開発の時間的リスク
- 自社開発による製品競争力への影響有無
- 外部IP導入のコスト
- 外部IP導入した場合のトラブル対処方法
- 外部IP導入した場合の技術継承方法
といった事項を勘案したりして、外部からIPを導入するか決めるわけであります。
で、自分は現在この "周辺回路の外部IPベンダ" に当たる場所で働いており、周辺回路IPを導入した 半導体集積回路開発会社に対し、IPの技術サポートを提供しております (冒頭の通り)
外部導入IPと言うと「買ってきたIPをパコっと組み込めばそれでOK?」と感じる方も多いかと思うのですが、実際にはそれほど単純なものではなく、導入IPが半導体集積回路の中で意図した動作をするか様々な検証が必要です
例えば:
- Simulationによる論理動作検証
- 信号タイミング検証
- 顧客開発環境中でのコンパイルとその検証
- 物理配置配線とその検証
- アナログ信号品質検証
- 電源品質の検証
- 出荷テスト回路の組み込みと検証
- 出荷テストパタンの生成と検証
- 信頼性の検証
等がで、上記それぞれに対して検証用のモデルが存在します。が、検証時に何かと問題が発生したり、「検証方法やOK/NG判断基準が良く分からない」といった顧客や、「そもそも仕様がよく分からない」といった顧客もいたりして、それらに対する技術サポートが必要になるわけであります。
(次回へ続く?)