東京五輪マラソン 競技地である札幌の気候

東京五輪は 7/30 から陸上競技が始まりまして、陸上競技マニアである自分は現在非常に楽しんでいるところであります。

で、特に長距離マニアであり、かつ大迫傑のファンである自分は 男子マラソンが注目競技になるわけですが、このマラソンに関して、開催地札幌について以下のような記事が出ております (東スポ)

 

【札幌11日連続真夏日でマラソンが危ない!世界気象機関が異例の警鐘】

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(※東スポ)

 

この記事では「34度」などと非常に煽っておりますが、これはあくまで日中最高気温であり、午後1時頃の気温になります。(もちろん暑いのは間違いないのですけども)

一方でマラソン開始時間は朝7時、終了時間は朝9時あたりであり、このあたりの時間帯は比較的に涼しいと考えられます。では実際問題、マラソン競技の時間帯はどの程度の気温になるのでしょうか?

 

ちなみにマラソン競技のスタート時間なのですが、以下のような曲折がありました。

  • 原案:東京 / 朝7:30スタート
  • 修正案1:東京 / 朝6:00 スタート
  • 修正案2:札幌 / 朝7:00 スタート (これで確定)

もともとは東京で朝7:30スタート予定だったのですが、するとゴール時間は朝9:30頃になり、その頃にはかなり気温も上昇するので、こりゃマズいのでは…?的な議論が始まり、その結果 東京 / 朝6:00スタートに変更になりました。朝6時スタートというのは、朝早すぎて観戦もままなりませんし、ボランティア等の集合も難しくなると思われ、かなりすったもんだがあったようですが、やはりアスリートファーストということで(?)、選手の健康を考えて時間繰上されたようです。

 

がしかし!その後 2019年にドーハで開催された陸上世界選手権のマラソンにて、高温多湿が原因と思われる棄権者が続出する問題が発生し、その件が 東京五輪ラソンにも波及、再度すったもんだがあった末に、マラソン競技開催地が比較的涼しいと期待される札幌に変更されたのでした。

 

前置きが長くなりましたが、というころで「今回五輪のマラソン競技時間はどの程度暑いのか?」という疑問を解明すべく、調査してみることにしました。

 

以下、調査の方針となります。

  • 3つの案について、各地/各時間の温度/湿度を確認する
  • 日々のバラつきを抑えるため、上記 温度/湿度は過去1週間の平均値をとる
  • 上記平均温度/湿度から、WBGT (暑さ指数)を求める
  • 3つの案のWBGTを比較
  • スタート時間/ゴール時間の両方で比較する

 

ここでWBGTなる暑さ指数を求めるのですが、これは以下のように気温と湿度によって決まる値になります。例えば 気温27度/湿度85% であれば、WBGT=28。基本的に、気温・湿度ともに高くなると、WBGTも高くなります。湿度に大きく依存するのがポイントでしょうか。(※ただしこの表は直射日光による体感温度の情報は考慮していない)

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次に参考情報として、WBGT値と熱中症患者発生率の関係になります。以下のように、WBGTが28を超えると、一気に熱中症患者が増加するようです。なので、WBGTの1つの基準が28になるかと思います。

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ではまずは各案のマラソンスタート時間を見てみましょう (気象庁のサイトで確認)

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  • 原案(東京/7時半):26.6℃ / 82%
  • 修正案1(東京/6時):25.3℃ / 88%
  • 修正案2(札幌/7時):25.5℃ / 75%

原案に対して、修正案1は 気温が1.3℃下がってますが、湿度は逆に6%上昇しております。また意外にも修正案2 (札幌)は 温度が案1(東京)よりも高く、これは時間帯が 案1⇒2 で1時間遅くなったことが影響しているようです。ただし案2は湿度が大幅に低いです。

 

では上記からWGBTを確認してみましょう。

【マラソンスタート時間のWBGT】

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  • 原案(東京/7時半):26.6℃ / 82%  ⇒ WBGT=27程度
  • 修正案1(東京/6時):25.3℃ / 88% ⇒ WBGT=27程度
  • 修正案2(札幌/7時):25.5℃ / 75% ⇒ WBGT=25.5程度

意外にも(?) 修正案1はWGBTはほぼ同じ(27程度)となっております。気温は下がったのですが、代わりに湿度が上がって相殺されてしまっております。一方で修正案2は気温は修正案1とほぼほぼ同じものの、湿度がかなり低くなり、WBGTが1.5程度下がりました(25.5)。どちらも警戒レベルの範疇なのですが、修正案2はかなり安全方面になっております。

 

次にマラソンゴール時間 (スタート時間+2時間)を見てみましょう。

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  • 原案(東京/9時半):28.2℃ / 74%
  • 修正案1(東京/8時):27.1℃ / 81%
  • 修正案2(札幌/9時):27.5℃ / 68%

スタート時間から2時間経過しているので、各案ともに温度が2℃程度上がっております。ではこちらもWBGTを見てみましょう。

 

【マラソンゴール時間のWBGT】

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  • 原案(東京/9時半):28.2℃ / 74% ⇒ WBGT=28程度
  • 修正案1(東京/8時):27.1℃ / 81% ⇒ WBGT=27程度
  • 修正案2(札幌/9時):27.5℃ / 68% ⇒ WBGT=26程度

原案の場合は厳重警戒領域(WGBT=28)に入っていますが、修正案1は辛うじて警戒領域(WGBT=27)、修正案2はそこから余裕をもって警戒領域中(WBGT=26)になっております。

 

以下再掲ですが、こちらのデータを見ますとWBGT=26は ある程度リスクが抑えられている領域のように見えます。

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ただし上記は1週間の平均値で見たものなので、最後に本日8/1のケース(かなり暑い)と、参考としてドーハのケースを合わせて見てみたいと思います。

 

【8/1マラソンゴール時間、およびドーハ世界選手権時のWBGT】

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  • 原案(東京/8月1日/9時半):30.8℃ / 64% ⇒ WBGT=29程度
  • 修正案1(東京/8月1日/8時):29.5℃ / 76% ⇒ WBGT=29程度
  • 修正案2(札幌/8月1日/9時):29.5℃ / 70% ⇒ WBGT=28.5程度
  • ドーハ世界選手権(深夜):32.7℃ / 73.3% ⇒ WBGT=31.5程度

本日の場合、修正案2でもWBGT=28.5 と厳重警戒レベルに入ってしまいました。。。ただし原案/修正案1よりはマシであります。で、特筆すべきはドーハ世界選手権のヤバさ(WBGT=31.5)でしょうか。ただしドーハの場合は深夜で直射日光がなく、今回の東京五輪は朝で直射日光があることを考えると、こちらもけっこうヤバいような気もしてきました。

 

以下まとめ:

  • 東スポは「34℃」などと煽っているものの、競技時間帯は30℃未満と考えられる
  • WBGT的に考えて、札幌は東京と比較して若干マシと言える (WBGTが 0.5~1.5減)
  • 競技当日が平均的天候の場合、競技時間帯のWBGTは26程度であり、熱中症等のリスクはそれほど高くはなさそう
  • 競技当日が暑い方向に振れた場合、WBGTが28を超える可能性があり、熱中症等による途中棄権が増える可能性有
  • ただし今回参照しているWBGTは直射日光を考慮しておらず、天気が快晴であった場合、途中棄権が激増する可能性有
  • 途中棄権が続出したドーハ世界選手権はWBGT=31.5程度であり、今回の札幌と比較すると遥かにリスクが高い状況であったことが伺える (ただし深夜開催で直射日光なし)

 

ということで、WBGT値を使って調べてみたものの、直射日光の影響がどの程度影響するか良く分からないので、中途半端な纏めになってしまいました。暑いサバイバルなレースにはなりそうなのですが、どの程度のサバイバルになるかは当日天候次第のようです。ちなみに調べ出した当初は「札幌の朝方のレースであれば、それほど暑くないのではないか」と予想していたのですが、そうとも限らないようですね。。。

 

ちなみに今回マラソン日本代表の3選手 (大迫、中村、服部) は比較的に暑さ耐性が高いと思われるので(MGC等で実証済)、競技当日 暑い気候になる程、上位を狙える確率が増えると考えております。

 

ともあれ当日 (8/8) が楽しみっす

\(^o^)/