住もう君

 

 

最近、こちらの本を読みました。

 

起業の天才 
江副浩正 8兆円企業 リクルートをつくった男

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タイトルの通り、リクルート創業者 江副浩正氏の人生ストーリで、主に以下の3パートに分かれております

  1. 生い立ちから起業まで
  2. 会社の事業拡大
  3. リクルート事件から晩年

自分はもともとリクルート及び江副浩正氏に関する知識はほぼほぼゼロだったのですが、「この本は面白い」という評判を多々目にしまして、自分も読んでみることにしました。結果としては評判通り、すこぶる面白い内容でした。

 

なお

ジェフ・ベゾスはこのヤバい日本人の「部下」だった

と煽っていますが、これは「某米国企業(ファイテル)を買収した際、たまたまその買収企業に新卒時代のジェフ・ベゾスが在籍していた」といったものでした。類まれなる先見性を持ったこの2人が交わっていたのは確かに奇跡的なことかもなのですが、特に濃厚に関わっていたということは無さそうで、この煽り文句はあくまで煽り目的に過ぎない印象です。

 

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【起業まで】

江副氏はリクルート前身の「大学広告」という会社を大学時代に起業するのですが、その過程は以下のようなものでした:

  • 東大在籍時、アルバイトで「東大学生新聞会」の広告取り営業要員として加入 (コミッション制で、高収入の可能性があったため):1958年
  • 当時 大手の新聞(朝日・毎日等)の広告大部分を占めていた映画業界を営業で回るも、大学新聞など全く相手にされず
  • ある日 大学キャンパス内を歩いていると、丸紅の学生向け会社説明会掲示を目にする
  • そこから、大学新聞に企業説明会の告知広告を掲載することを着想する
  • この企業の求人広告が大成功し、起業へと結びつく:1960年

 

上記補足として、

  • 当時、大学生の一般的就職情報はほぼ皆無であった
  • なので当時の大学生の就職は、教授や研究室と企業のコネクションに依る部分が大きかった
  • 企業規模が小さかった時代はそれでも何とかなったが、高度経済成長期に差し掛かると、企業は大量の優秀な人員が必要となり、また学生側もコネに頼らず自分で会社を決めたいという機運が高まった
  • がしかし、企業・学生ともにどうやってお互いを選べば良いのか、その方法が分からなかった
  • その企業と学生を初めて「マッチング」したのが江副であった

といった背景/事情だったようです。

 

また起業後「企業への招待」という就職情報雑誌を刊行するのですが、これが

  • 広告のみの雑誌である
  • 無料で配布する (費用は企業広告料で賄う)

という当時出版業界としては非常識 (かつ革新的) なスタイルであったとのこと。

 

大学新聞で成功を収めたとはいえ、

  • 起業 間もない小企業の
  • 非常識なスタイルの雑誌

といった代物は、広告を出す企業側、及び資金融資側から共に相手にされるものではなかったが、江副氏らは

  • 大企業の広告料は当初無料にする
  • 賃貸事務所保証金を担保に融資を受ける

等の方法で何とかそれを乗り越え、何とか出版成功に辿りついたようです。いろいろ凄い。

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【事業拡大】

 

その後は、日本の高度経済成長、および怒涛の営業力で会社が拡大していくのですが、

 

当時 大企業で活躍する人材はほぼ「大卒男子」で、あったようなのですが、リクルートはまだ有名大企業ではなく、また物作り企業でもないため、優秀な人員集めに苦労する。そこで江副氏は 当時の以下の事情に着目する:

  • 男性大学進学率:24.7%
  • 女性大学進学率:5.8%

 

上記から以下を考え、

  • 高卒男子にも、優秀な人材が多々いるはず
  • 大卒女子は、とびきり優秀であるはず

優秀な高卒男子・大卒女子を多く入れ、活躍の機会を与える・実力勝負させることで、会社を発展させていったとのこと。(当時の企業では、「女性社員は結婚寿退社までの腰掛人員」という位置づけであることが多く、女性社員が本業で活躍できる環境は少なかった)

 

ということで、大卒・高卒・女子といった異なる背景を持つ社員達が実力勝負で活躍するというのは、まさに今でいうダイバーシティでして、合理的な江副氏は当時からこの結論に行き着いていたようです...

 

 

で、その後は以下のような事業拡大:

  1. 住宅情報 (現・スーモ)
  2. とらばーゆ
  3. カーセンサー
  4. じゃらん
  5. ゼクシィ
  6. ホットペッパー

どれも商品・サービス・機会 を提供したい側と、それを利用したい側をマッチングするものになっております。すべてルーツは 大学生の就職マッチングで、それが他業界に展開されたというわけです。

 

上記1つ目の住宅情報 (現 スーモ)ですが、1970年に事業開始したとのこと。

当時 マンションブームが始まっており、多くのマンションが販売されるも、当時広告と言えば新聞のチラシや不動産屋の店頭物件情報のみ。しかもその内容も質の悪い物が多かった(間違った情報、誇大な情報等)。

 

自身で実際にマンションを探していた江副氏はこの問題にぶつかり、この問題が大学就職と同じ構造であることに気づいたとのこと。

  • 売り手と買い手間に、情報の非対称性がある
  • 売り手と買い手間に、正確で効率の良い情報チャネルが存在しない

そこから、両者間をダイレクトに繋ぐサービスを着想したようです。

 

言われてみればその通りなのですが、当時 「リクルート = 就職情報の会社」という固定イメージがあって積極的な人は少なく、また実際 当時リクルートには住宅業界についての知見やノウハウもなかったようなのですが、最終的には「やってみなければ分からない」ということでこの住宅情報が誕生したとのこと。

 

スーモ君のルーツには、このようなことがあったのですね。

 

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もとい、上記は 某テーコー不動産の住もう君です。 (家を売る女)

本当のスーモ君はこっち:

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 【その他、リクルート事件等】

 

その他、この本には以下ような事項も描かれておりまして、どれも熱い内容でした。

  • 就職情報、住宅情報について競合他社をどのように叩き潰したか
  • コンピュータ、情報産業に対する先見性
  • 既得権益破壊からのリクルート事件

 

またジェフ・ベゾスとともに、例えば以下のような方々も途中に出てきており、話を盛り上げております。

 

日本は長らく「もの作り」で経済成長してきているので、「情報」が商品であるリクルートは、日本の経済界からの支持を中々得ることが出来なかったようです。ということで、かの稲盛和夫氏もこの本の中では「 江副氏に敵対する抵抗勢力」として描かれているのに面白みがあります (そして江副氏は敗北)。

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【結論】

ということで冒頭に書きました通り、すこぶる面白い本でした。江副氏の人生、リクルートの歴史とともに、昭和から平成の時代の流れも体感することができます。

ちなみに江副氏の先見性・行動力等のスケールの大きさと比較して、自分の器の小ささを認識せざるを得ないところも有りました。ともあれ自分は自分の道を進むのだ。。。